賃料逆ザヤサブリースが撲滅されるかも。

 こんにちは。姫ちゃんです。

 

 空室になっても家賃が保証されるサブリースは、全空わけありの物件(だが、とても優良な物件)に融資をつける時など、使い方を工夫すれば、それなりに役に立つものではあります。

 

 しかし、ちまたのサブリースの使われ方は、そんなものではありません。

 

大半は業者が割高に売りたい区分所有のワンルームを、不動産のことを知らない素人に売る時に、「サブリースもついてて空室でも安心ですよ」っていうセールストークに使われるだけなんですけどね。

 

 もっというと、サブリースは1回の売買で3度おいしい契約みたいです。

 

1度目は、売買で割高に売れる

2度目は、サブリースで賃料の10%程度をもらえる

3度目は、売る時に安値で買い取れる(可能性がある)

 

みたいな感じで、ガッツリと業者の養分になってもらえる素敵な商品なわけです。

(元サブリース業者勤務の役員クラス談)

 

 そんな微妙な業者のサブリースでも、決して悪いわけではなくて、ほぼ手放しで、一ミリも脳も手も動かさず、効率は悪いけど、なんとなく資産を形成するという点では、立地をちゃんと選べば使えないこともありません。

 

例えば、東京都心三区(千代田区・中央区・港区)の駅近・好立地の築浅区分でそこそこ(6%以上)利回りがあれば、税金などを加味するとちょっとした手出しは発生するものの、まぁ将来的にそこそこの資産が残ることは確かです。

 

 つまり、一切面倒なことはしたくないけど、年収が3000万円以上あって、なにかしら税金対策をしながら資産形成をしないとヤバい人にとっては、こういうサブリースも使えなくはないってことです。

 

 いいですか、あくまで年収が3000万円以上ですよ。

 

年収が1000万円以下の人は、残念ですが時間と労力を使って工夫して資産形成しないと、相当効率が悪いです。

 

 まぁ、それでも「サブリース王に俺はなる!」って方は別にかまいません。本人の意思なので。

 

ただ、客観的な数値で判断すると、効率が悪い資産形成方法だよと述べているだけです。

 

 さて、使い方次第で毒にも薬にもなる諸刃の剣のサブリースですが、その中でも今回問題となっているのは「逆ザヤサブリース」です。

 

 「逆ザヤサブリース」とは、入居者からもらう家賃よりもサブリース業者がオーナーに支払う家賃の方が高いという問題です。

 

通常のサブリースは、入居者からもらう家賃の10%程度をサブリース料として差引き、残りの90%をオーナーに支払うなど「入居者からもらう家賃>オーナーに支払う金額」という形になります。

 

たとえば「家賃10万円・サブリース賃料9万円」というように、入居者から10万円もらって、1万円をサブリース業者が差引いて、残りの9万円をオーナーに渡すという感じです。

 

 「逆ザヤサブリース」になるとこれが逆転し、「家賃9万円・サブリース賃料10万円」となり、業者が1万円損してしまう状況となります。

 

 さらにひどくなると「賃料5万円・サブリース賃料10万円」などと、月々の業者の損失が5万円になってしまうなんて大きく「逆ザヤ」になっているものもあります。

 

「これがなぜいけないのか?」「業者が損してでもオーナーを助けてくれるんだから、いいじゃん!」

 

って思ったらいけません。

 

 この「逆ザヤサブリース」には2点問題があります。

 

 1つ目の問題は、事業の継続性です。

 

 当たり前ですが、月々損失が出るサブリースを未来永劫ずっと続けることなんてできませんよね。

 

損失を出し続ければ、サブリース業者が倒産するわけで、そうなればサブリースは終了となります。

 

倒産しないためには、サブリース賃料を、入居者から実際にもらう賃料まで引き下げる必要が出てくるわけで、結局、どこかのタイミグでサブリース賃料が下がるわけです。

 

 かの有名なレオパレス出身の方にこの「逆ザヤ」について取材したことがあります。

 

 界壁問題よりも以前の話ですが、レオパレスでは逆ザヤになっている物件を対象として、大規模な賃料引き下げorサブリース終了を促すプロジェクトを行ったそうです。

 

当時、赤字だった物件(とそのオーナー)を切り捨てることで、レオパレスの業績はV字回復したと、誇らしげに語っていました。

 

(レオパレスの株主さんがこの業績回復のやり方を倫理的にどう評価したのか、個人的には気になるところです。)

 

まぁ「逆ザヤ」だと、遅かれ早かれそうなる運命なんですよね。

 

 2つ目の問題は、割高に買わされることです。

 

投資物件は通常、利回りを見て購入するものであり、サブリース賃料が高ければその分、物件価格を上げることができるからです。

 

例えば「利回り10%」の物件を買いたいという投資家がいたとして

 

家賃5万円(年60万円)の場合、利回り10%だと、売買価格は600万円となりますが

 

家賃10万円(年120万円)の場合は、売買価格は1200万円となるわけで、一気に2倍の値段をつけることができるわけです。

 

 かぼちゃの馬車事件の時も、これと同様な手口で、業者が、サブリース賃料9万円くらいで高利回りの物件を売りさばいていましたが、

 

実際の入居者から賃料を聞いてみると、だいたい半分の4万円台だったため、逆ザヤが大きく、かぼちゃの馬車は早々に倒産してしまいました。

 

 ちなみに、かぼちゃの馬車の場合、入居者との賃貸借契約書の金額はちゃんと10万円と逆ザヤにならないように書類上は作成し、契約書とは別に「賃貸借契約書の家賃9万円ではなく4万円とする」というような覚書を締結していました。

 

まぁ、覚書だろうとなんだろうと、逆ザヤには違いないんですけどね。

 

 かぼちゃの馬車の場合、本当の家賃で計算すると5000万円以下になるようなシェアハウスを1億円以上で売っていたので、なかなかの割高っぷりでした。

 

 そんな「逆ザヤサブリース」問題に終止符が打たれようとしているのです。

 

全国賃貸住宅新聞の9月25日付の記事にあったのですが、東京地裁で「逆ザヤを説明しないで売ったら違法」で「賠償命令」が出たとのことです。

 

いや、これすごいですね。

 

 この判決のポイントは2つです。

 

1つは、売買時に「逆ザヤ」であることを説明しない場合「説明義務違反」とされたこと。

 

もう1つは、損害額は「本来の家賃で計算しなおした物件価格と割高で買わされた価格の差額」と算定されたこと。

 

 上で述べた例でいうと

 

家賃10万円

利回り10%

売買価格:1200万円

 

で購入した投資家に対して、本当は家賃が5万円だということを告げなかった業者に対して、

 

家賃5万円(年60万円)

利回り10%

売買価格:600万円

 

で計算しなおした600万円との差額を損害賠償額とするということです。

(金額は例です。)

 

 今回の記事では「入居者の賃料は原則●●円」と記載されていたが、実際は大きく下回る金額だったとのことです。

 

たぶん、業者的には「原則」って書いてあるじゃん!「原則」なんだから「例外」もあるよね~って感じだったのかもしれませんが(勝手な予想)

 

今回については既に入居者が存在していて、その賃料が、原則通りではなかったため、それをちゃんと説明しなかったから、説明義務違反だと認定されたのでしょうか。

 

これは裏を返すと、空室の物件であれば周辺の家賃相場が5万円でも(今は誰も住んでいないので)原則10万円の家賃ですと言えば、割高な金額設定をする余地が残っているということです。

 

なぜなら、今回の判決はあくまで「説明義務違反」を認定しただけで、割高であることは別に法律違反ではないからなんですよね。

 

正しい情報をもらったうえで、割高でも購入すると本人が納得しているのであればそれはそれでよいということなのです。

 

 そういう意味で、転売ヤー問題と同じで、法律は違反していないけど商売として倫理的にどうなん?ってことについて言及したわけではありませんので、あしからず。

 

 ちなみに今回の報道では、サブリース賃料での利回り9%台の物件「価格約1000万円」を実際の家賃(5万円)で利回り9%台に計算しなおした金額「約600万円」が正しいとして、差額の約400万円が損害額となったそうです。

 

 もしこれが都内のそこそこ好立地の場所の物件だとしたら、この投資家さんは、高騰の激しい都内の区分を利回り9%でゲットしたことになるわけで、結構お得な感じになるわけです。

 

たぶん600万円で売り出せばすぐ売れますしね。

 

 まぁ、適正価格600万円で家賃5万円っていう時点で、23区内のどのへんか、不動産投資家ならピンとくる気はしますが。

 

とりあえず、この記事の投資家さんたちは逆ザヤ物件をどうにかできそうで良かったですね。

 

 そして、サブリース賃料と実際の賃料が大きくかい離して逆ザヤになっている物件を持っている人にチャンス到来です!

 

この判決を真似して、二匹目のどじょうよろしく、業者に対して訴訟を起こして、自分たちの低利回り区分を、一気に高利回り物件に変えてやるぜ!みたいな(不勉強なために割高物件を掴まされた)投資家も出てくるかもしれません。

 

一番悪いのは業者ですけど、自分の不勉強は棚に上げて訴訟できる肝が据わった人であれば、これはかぼちゃの馬車徳政令以来のチャンスだと言えます。

 

いやー、モラルハザードですね。

 

 っていうか、そもそもちゃんと勉強していれば、こんな(周辺相場家賃とかい離している)物件を買うことないはずなんですけどね。周辺相場なんてSUUMOで検索すれば一発でわかるし。

 

 ということで、コツコツと真面目に勉強し、ちゃんと周辺相場も調べ、現地調査もしているような、努力を怠らない投資家である本メルマガの読者の方には、あまり関係のない話ですけれど、今後の逆ザヤサブリースの在り方に一石を投じる判決だったので取り上げてみました。

 

 再度、言いますが、サブリースは使い方次第で毒にも薬にもなる諸刃の剣です。

 

素人がやすやすと使いこなせるものではありませんから、用法容量を守ってお使いください。

 

でわでわ。